公認心理師試験
からみた公認心理師

国里愛彦(公大協国試検討委員会・専修大学)

公大協国試検討委員会

委員長
国里 愛彦
専修大学
副委員長
丹野 義彦
東京大学
委員
朝比奈牧子新井雅岡島純子岡村尚昌荻野裕二金井篤子境泉洋杉浦希瀬口篤史谷真如田上明日香中島実穂林明明古川洋和星野翔水島秀聡村山浩由山口加代子山﨑修道
目的公認心理師試験の内容と制度の問題点を検討し、試験がどのようにあるべきかを提言する
主な取り組み
公認心理師試験の検討ブループリント調査コアカリキュラム案

公認心理師試験からみた公認心理師

企画公認心理師養成大学教員連絡協議会
企画代表・司会国里 愛彦専修大学
話題提供
公大協から
国里 愛彦
専修大学
試験対策の専門家から
宮川 純
河合塾KALS
養成校教員から
森田 麻登
神奈川大学
受験者から
大水 拓海
専修大学
指定討論丹野 義彦東京大学

受験者の中心は区分Aへ

区分A(大学25科目+大学院10科目)

1,937人
第9回受験者の91%
  • 第7回から最大の受験区分

特例措置区分

  • D1・D2・E・Fは減少
  • EはAへ、FはBへ移行
  • Gは第5回で終了

試験評価の主軸も、制度移行期から新しい養成課程の質保証

第8回以降合格率が低下

2,400
受験者
60.0%
合格率(全体)
67.7%
合格率(A区分)
第6回(2023) 第7回(2024) 第8回(2025)
全体合格率 73.8% 76.2% 66.9%
区分A合格率 94.9% 90.1% 77.2%
  • 第7回から学校別合格率も公表されるように。
  • 試験問題の難化も検討課題に。

公大協国試検討委員会の取り組み

(1)LLMによる問題検討

2024年度

  • Gemini 1.5 Proによる第7回の正答率:96.75%
  • 高性能化とRAGにより正答率が高すぎて、試験検討に使いにくい

2025年度

  • オープンソースモデル(gpt-oss-20bなど)でAPI費用を節約
  • 適度に誤答するため、問題特性を検討できる

LLMを問題の特徴を映す道具として使う

ローカルLLM活用の流れ

1
過去8回
約1,300問
2
LM Studioで
2モデルを実行
3
Pythonで
正誤判定
4
正答率・誤答
傾向を分析
  • モデルの正答率と、人間の合格率の共変関係を検討
  • 誤答を出題形式・分野・知識問題/事例問題から質的に評価

LLM正答率は難易度指標になる?

  • 第2~5回:2モデルの正答率は、おおむね受験者の合格率と連動(第1回は現任者が多く受験したからか連動せず)
  • 第6~8回:gemma-3n-e4b は連動、gpt-oss-20b は連動せず

モデルによる差や受験者集団の影響は生じるが、試験の一般的傾向を把握する補助指標として一定の意義がありそう

ローカルLLMの特性

出題形式

単一回答 70.0%
複数回答 56.0%
正解を過不足なく選ぶのが難しい

得意分野

統計・心理学・心理療法
76~84%
理論・概念の一般的知識に強い

不得意分野

制度・法律
50~56%
国固有の知識で誤答しやすい

問題タイプ

事例問題は一般知識問題より高正答。文脈から答えを推測できる可能性

誤答/正答パターンから、一般的知識や文脈だけで正答できないかなど、問題の難易度と構成を精査する材料になるかも

(2) ブループリント調査

検証したい問い

初任公認心理師として研鑽を始める段階に必要な知識・技能を問う出題基準を用意できているか?

検討する枠組み

  • 初任者を指導する主要5分野の公認心理師が評価
  • 医師国家試験の出題基準妥当性研究を参考

出題規準が妥当か現場から検証する

出典:年報2025 pp.6–7;三苫・大滝・泉(2016)

調査方法

対象者と項目

  • 現場で働く公認心理師にオンライン調査を実施
  • 令和8年版ブループリントの24大項目・75中項目をそのまま項目として提示
  • 中項目ごとに小項目(キーワード群)も併記

評定法

頻度:その内容を業務でどのくらい用いるか

0 全く用いない/1 まれに/2 時々/3 しばしば/4 毎日のように用いる

重要度:その内容が業務でどのくらい重要か

0 全く重要でない/1 あまり/2 やや/3 重要である/4 非常に重要である

参加者:公認心理師83名

50.2
平均年齢(歳)
SD 10.0/26–75歳
19.1
実務経験(年)
SD 9.5/3–50年
  • 性別:男性49名、女性33名、その他1名

現在従事している領域(複数回答)

領域 n
保健医療 36 43.4
教育 36 43.4
福祉 28 33.7
産業・労働 21 25.3
司法・犯罪 11 13.3

経験年数19年、5領域の中堅からベテランの実践家が参加

回答の分布

評定 0 1 2 3 4 平均 「3・4」計
頻度(%) 6.7 16.4 23.6 29.1 24.1 2.47 53.2%
重要度(%) 1.0 5.6 19.5 34.3 39.6 3.06 73.9%
  • 頻度は0〜4に広く分布し、0も6.7%
  • 重要度は重要に偏り、0と1合わせても6.6%
  • 75中項目の平均値の範囲は、頻度 1.34〜3.59、重要度 2.30〜3.78

重要度は全体に高く、相対的に平均が低い項目も「不要」を意味しない

全体:高く評価された5項目

  • 高く評価されたのは、倫理・情報管理・安全確保と、支援の基盤となる関係構築・発達理解
  • 重要度と頻度の相関は高く(0.87)、頻度より重要度が一貫して高い

重要度

  • 情報の適切な取扱い
  • 要支援者等のプライバシーへの配慮
  • 公認心理師の法的義務及び倫理
  • 各分野における公認心理師の具体的な業務
  • 要支援者等の安全の確保と要支援者の視点

頻度

  • 情報の適切な取扱い
  • 各分野における公認心理師の具体的な業務
  • 良好な人間関係構築のためのコミュニケーション
  • 要支援者等のプライバシーへの配慮
  • 非定型発達

保健医療:高く評価された10項目

共通基盤に加え、精神疾患、心理療法、アセスメントが上位に並ぶ

重要度

  • 情報の適切な取扱い
  • 法的義務及び倫理
  • 各分野の具体的な業務
  • 代表的な心理療法・カウンセリング
  • プライバシーへの配慮
  • 代表的な精神疾患と支援
  • 安全の確保と要支援者の視点
  • アセスメント情報と把握手法
  • 非定型発達
  • 情報・観察・検査結果の統合

頻度

  • 情報の適切な取扱い
  • 各分野の具体的な業務
  • プライバシーへの配慮
  • 代表的な精神疾患と支援
  • 代表的な心理療法・カウンセリング
  • 良好な関係構築のためのコミュニケーション
  • 情報・観察・検査結果の統合
  • アセスメント情報と把握手法
  • 状況に応じた支援方法の選択・調整
  • 法的義務及び倫理

福祉:高く評価された10項目

発達・障害理解、包括的アセスメント、福祉現場での支援が特徴として現れる

重要度

  • 非定型発達
  • 情報・観察・検査結果の統合
  • 情報の適切な取扱い
  • 各分野の具体的な業務
  • 適切な記録・報告・振り返り
  • 法的義務及び倫理
  • 身体障害・知的障害・精神障害
  • 安全の確保と要支援者の視点
  • 障害者(児)の課題と必要な支援
  • プライバシーへの配慮

頻度

  • 非定型発達
  • 各分野の具体的な業務
  • 情報の適切な取扱い
  • 情報・観察・検査結果の統合
  • 障害者(児)の課題と必要な支援
  • 適切な記録・報告・振り返り
  • 良好な関係構築のためのコミュニケーション
  • プライバシーへの配慮
  • 福祉現場の課題と必要な支援方法
  • 身体障害・知的障害・精神障害

教育:高く評価された10項目

非定型発達、教育現場の問題理解と支援、アセスメントが中心となる

重要度

  • 情報の適切な取扱い
  • 各分野の具体的な業務
  • 非定型発達
  • 法的義務及び倫理
  • 教育現場の問題とその背景
  • 教育現場の課題と必要な支援
  • 安全の確保と要支援者の視点
  • 情報・観察・検査結果の統合
  • プライバシーへの配慮
  • 公認心理師の役割

頻度

  • 非定型発達
  • 情報の適切な取扱い
  • 各分野の具体的な業務
  • 情報・観察・検査結果の統合
  • プライバシーへの配慮
  • 障害者(児)の課題と必要な支援
  • 良好な関係構築のためのコミュニケーション
  • 適切な記録・報告・振り返り
  • アセスメント情報と把握手法
  • 状況に応じた支援方法の選択・調整

司法・犯罪:高く評価された10項目

共通の倫理・情報管理に加え、重要度では司法・犯罪分野の心理的支援が上位に入る

重要度

  • 情報の適切な取扱い
  • 各分野の具体的な業務
  • 法的義務及び倫理
  • 非定型発達
  • プライバシーへの配慮
  • 司法・犯罪分野で必要な心理的支援
  • 安全の確保と要支援者の視点
  • 心理学・臨床心理学の成り立ち
  • 適切な記録・報告・振り返り
  • 心理検査の特徴・意義及び限界

頻度

  • 情報の適切な取扱い
  • 各分野の具体的な業務
  • 情報・観察・検査結果の統合
  • 非定型発達
  • 適切な記録・報告・振り返り
  • 良好な関係構築のためのコミュニケーション
  • 法的義務及び倫理
  • アセスメント情報と把握手法
  • 心理検査の特徴・意義及び限界
  • 代表的な心理療法・カウンセリング

産業・労働:高く評価された10項目

プライバシー、コミュニケーション、ストレス・精神疾患、職場支援が目立つ

重要度

  • 情報の適切な取扱い
  • プライバシーへの配慮
  • 法的義務及び倫理
  • 各分野の具体的な業務
  • 代表的な心理療法・カウンセリング
  • 良好な関係構築のためのコミュニケーション
  • 安全の確保と要支援者の視点
  • 非定型発達
  • 代表的な精神疾患と支援
  • 職場の問題に必要な心理的支援

頻度

  • 情報の適切な取扱い
  • プライバシーへの配慮
  • 良好な関係構築のためのコミュニケーション
  • 各分野の具体的な業務
  • 法的義務及び倫理
  • 代表的な心理療法・カウンセリング
  • 代表的な精神疾患と支援
  • 非定型発達
  • ストレスと心身の疾病との関係
  • 情報・観察・検査結果の統合

ブループリント調査のまとめ

全体評価

ブループリントの75項目は、全体として「重要」と評価された。重要度は頻度より高く、初任公認心理師に求める知識・技能として広く支持された。

頻度は領域依存

実務で用いる頻度の高い項目は、従事する領域に応じて異なる。日常業務が領域固有の項目に反映されている。

共通する専門職基盤

情報管理、具体的業務、倫理、プライバシーなどは、多くの領域で重要度・頻度とも上位に現れた。

領域固有の重要性

保健医療の精神障害・心理療法、福祉の発達・障害、教育の教育課題、司法・犯罪の心理的支援、産業・労働のストレス・職場支援が上位に

今後の課題

ブループリント調査の継続

サンプルサイズに限界があるため工夫が必要。領域を複数回答にしたが主の領域が分かるように要検討

事例問題の妥当性の検討

各事例問題が要求する知識・技能・判断を整理し、初任公認心理師にとっての重要度や実務での使用頻度を経験者が評定する。あわせて、事例の設定、情報量、選択肢、求める判断が、実務上ありうる状況と初任者に求める水準に合っているかを検討する。

試験問題の検討とともに、初任公認心理師に必要な能力からカリキュラムを検討していく

引用文献

  • 国家試験検討委員会(2025)「活動報告書」『公認心理師養成大学教員連絡協議会 年報2025』所収.
  • 三苫博・大滝純司・泉美貴(2016)医師国家試験出題基準の妥当性に関する検討―卒後初期臨床研修指導医を対象とした質問紙調査の分析から―.『医学教育』47, 1–10.